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Update:
2019/07/18

根本かおるの東奔西走

ケニアでサステナビリティについて考えた【vol.2】干ばつで女性と子どもたちだけになった家族を、水耕栽培が支える

>>【vol.1】プラスチックごみをスタイリッシュに資源化を 
 
今回のケニア訪問で足を運んだ北西部のトゥルカナ県では、摂氏40度の暑さと乾燥が襲い掛かってきました。3月にモザンビークなど南部アフリカに壊滅的な被害をもたらしたサイクロン・イダイのことは、報道に接してご存知の方々も多いと思います。この南部アフリカでのサイクロンの影響で、湿った空気がケニアなどの東アフリカから遠のいてしまったのです。2019年は干ばつは避けられるだろうという当初の見通しが裏切られる結果となり、通常3月から5月の雨期の始まりが遅れ、降っても降雨量は少量にとどまっています。

雨を待つトゥルカナ族の女性たち ©WFP/ Martin Karimi

干ばつは、放牧や農業など自然と向き合いながらギリギリの生活をしている人々を苦しめます。国連世界食糧計画(国連WFP)では、人口のおよそ9割が貧困ライン以下で暮らすトゥルカナ県を含めケニア北部の国境地帯と東部を中心に、7月までにケニア全体で250万人が食料支援を必要とするようになると見込んでいます。 
 
ケニアにとって農業は国の主要産業。労働人口の75パーセントが農業に従事し、GDPのおよそ4分の1を占め、世界有数の園芸作物や紅茶の輸出国でもあります。だからこそ、ケニアの経済と人々の暮らしは気候変動の影響を受けやすいのです。国連環境計画(UNEP)でアフリカ地域の気候変動を担当するリチャード・ムナング氏によると、干ばつによりケニアは年に国内総生産の2.8パーセント、20億米ドル(およそ2200億円)相当を失い、食料不足人口が7割近く押し上げられています。

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砂漠地帯に佇むカクマの女性とその子供たち ©WFP Kenya

 
また、干ばつは地域の安全を脅かすことにもつながります。放牧に不可欠な水と牧草はますます希少な資源となり、人々をより脆弱な立場に追い込んでいます。北部の乾燥地帯で水と牧草を追い求めて遊牧民たちが通常の境界を越えて移動することが、コミュニティー内やコミュニティー間、場合によっては国境をはさんでの諍いや衝突につながり、人々をさらに追い詰めます。干ばつが人々の生活を守る上での脅威となっているのです。カラカラに乾いたトゥルカナの大地を前に、瑞々しい緑に富んだ日本がいかに恵まれているかを実感しました。 
 
「男性たちは水と草のあるところに家畜を連れて移動します。村に残された女性と子どもたちは、男たちが留守の間、水も生計の手段もない中で自分たちだけで暮らしていかなければならないのです」 こう話してくださったのは、ケニアの現状を日本の関係者に伝えるために5月半ばに訪日した国連WFPケニア事務所のアナリサ・コンテ代表です。

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国連WFPケニア事務所のアナリサ・コンテ代表と国連広報センターにて対談(2019年5月17日) ©UNIC Tokyo

 
こうした女性たちの暮らし向きを支えようと、国連WFPは地域コミュニティーと連携して、水や肥沃な土がなくても野菜を育てることのできる水耕栽培や垂直方向に空間を利用する栽培方法で野菜を育てることを奨励しています。あまり費用を掛けずに実施することができ、さらに複数の家族が共同で栽培することができます。

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水耕により栽培された野菜。最小限の土壌で栽培することができる ©WFP Kenya

 
「野菜を作れば栄養のバランスの取れた食事につながります。余ったものを売れば収入となり、暮らしを支えます。そして何よりも、自助と共助につながるものと期待しています」とコンテ代表は語ります。こうした栽培方法はまだ始めたばかりですが、県政府などとも連携しながら広げていく方向です。

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トゥルカナ県で灌漑により栽培された果物を手に取るWFPケニア事務所のアナリサ・コンテ代表(青い服の女性) @WFP Kenya

 
私のケニア視察でも、女性グループが国連WFPからの支援を受けて製粉事業を手掛け、見事ビジネスに成功している事例に触れることができました。今では自立して、支援なしで事業を運営しています。女性たちが「家族を食べさせる」「子どもに教育を受けさせたい」という具体的な目標のためにプラグマティックに協力する姿が印象的で、すでに試験的に水耕栽培を始めていました。がんばれ、ケニアの女性たち! 

製粉事業を手がける女性グループのメンバーたちと ©UNIC Tokyo

※この記事は2019年7月18日時点の情報です。

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PROFILE●ねもと・かおる●国連広報センター所長。テレビ局アナウンサーを退職後、米国で国際関係論修士号を取得し、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で難民支援活動に従事。ジュネーブ本部では政策立案、民間部門からの活動資金調達のコーディネートを担当。WFP(国連世界食糧計画)広報官、国連UNHCR協会事務局長など要職を務める。

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