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2017/03/15

フードジャーナリスト小松宏子さんがReport!【vol.2】

2017【アジアのベストレストラン50】●栄えある“ベストパティシエ”に「エスキス」成田一世さんが!

レストランランキングとして世界の食のトレンドを左右する「世界のベストレストラン50」。去る2月21日に行われたアジア部門のアワード「アジアのベストレストラン50」の個人賞部門で最も注目度の高い「アジアのベストパティシエ賞」を、日本勢が受賞! その意味をレポートします。 
 
2017【アジアのベストレストラン50】vol.1 トレンド編はこちら>> 

成田一世さんのデセールの象徴でもある、黄金の球からクリームがとろりと。

 
◆◆◆ベストパティシエ賞とは?◆◆◆  
 日本人にとってもう一つのとても誇らしいニュースは、銀座のフレンチレストラン「エスキス」のシェフ・パティシエ成田一世さんがアジアベストパティシエ2017に輝いたことだ。 

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上の写真は、「アジアのベストレストラン50」でベストパティシエ賞を受賞した瞬間。壇上にはKAZUTOSHI NARITAの文字が燦然と輝く。
 
 この賞は、「アジアのベストレストラン50」が始まった翌年の、2014年に新設された賞である。第一回は、昨年新宿のニュウマンに同名のデザートバーを出店したことでも話題になったシンガポールの女性パティシエ、ジャニス・ウォンさん。2回目は日本が誇るパティシエであり、長らく洋菓子業界を牽引してきた、杉野英実さん。昨年は再びシンガポールの女性パティシエ、チェリー・コウさん。そして今年、満を持して、ドラマチックなデザートでは傑出した成田一世さんの受賞となった。 

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名前の刻まれたクリスタルのトロフィーを高々と振り上げて喜ぶ成田一世さん。
 
◆◆◆世界のベストパティシエはまさに重鎮が受賞◆◆◆ 
 一方、世界大会である、「世界のベストレストラン50」にもベストパティシエ賞があるが、こちらの受賞者には、ずらりと重鎮が並ぶ。2016年はパティスリー業界の巨匠ピエール・エルメさん。2015年は伝説のエルブジのシェフ、フェラン・アドリアの弟アルベルト・アドリアさん。彼はパティシエ出身のシェフとして、世界的に活躍を続けている。その前年は、2013年に「世界のベストレストラン50」で1位になった「カンロカ」3兄弟の末弟のジョルディ・ロカさん。翻って、「アジアのべストパティシエ賞」の価値も推して知るべし。

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世界中にパティスリーを展開する、ピエール・エルメさん。(c)Stéphane de Bourgies HD 
 
 1回目のレポートで、ベストレストランはある種“パリコレ”であると述べたように、毎年のトレンドを楽しむものである。しかし、ベストパティシエ賞は、ランキングとはやや性格を異にする、人気、実力を兼ね備えた、突出したパティシエしか受賞できないものと言えよう。 

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2色のマカロンコックを合わせ、クリームをはさむ、エルメ氏の象徴でもあるマカロン。(c)Mac Jardin Sicile HD 
 
◆◆◆成田一世さんのこれまでの活躍◆◆◆  
 

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ショコラをテーマにスフレなどを盛り込んだ成田さんの華麗な一皿。
  パリコレというよりもノーベル賞、そんなベストパティシエを受賞した、成田一世さんはこれまで、どんな軌跡を描いてきたのか。そのプロフィールを簡単に紹介しよう。1967青森県に生まれ、スポーツを志すも、卒業後はパティシエの道に。1999年以降、「エノテカ・ピンキオーリ」、「ピエール・エルメ・パリ」、「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」など、国内外の名店で腕を磨く。2007年にはNY TIMES紙でパンとデザート部門のBest of New Yorkに選ばれる快挙も成し遂げた。2012年帰国後、2013年のエスキスの開店時からシェフ・パティシエに。昨年3月銀座東急プラザの中に、皿盛りデザートが食べられる「エスキスサンク」を開店。20年にわたり、世界のデセールの頂点を見据えてきた結果がまさに、今回の受賞なのである。 

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さまざまなハーブとフレッシュフルーツが調和し、香る涼し気なデセール。
 
◆◆◆成田さん受賞の喜びと抱負を語る◆◆◆   
  今回の受賞の感想を聞くと、「受賞したことは素直に嬉しいが、これによって何が変わったわけでもないし、目指すものが変わるわけではない」とクールだ。ただ、受賞後は多数の海外メディアがインタビューに訪れ、自分がこれまで積み上げてきたことを、広く世界に発信することができたこと、これが一番の喜びだったという。余談だが、日本のメディアはまったく取材に来ないというのだから、嘆かわしいかぎりだ。曰く、「日本人はヨーロッパで学んだことを持ち帰り、それを再現することにはとても長けています。けれど、上手なコピーで終わってしまっている場合が多く、とても残念。なぜなら、フランス人が日本に旅行してもエルメスを探すわけではない。つまり、同じものでは意味がないのです。+αの価値がなければ。だからこそ、自分は何をすべきか、ということを常に考えてきました。自分にしか発信できないデセールを目指して。それが公に認められたということは何より嬉しいですね」。 

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パリ、フィレンツェ、NY、台北など、さまざまな都市の空気をデセールに生かして、今があるという、成田一世さん。
 
◆◆◆これからのスウィーツはどうあるべき?◆◆◆   
  成田さんのこの、“常にオリジナルを求める”スピリットはジョエル・ロブションのパティシエとして過ごした時代に培われたのだという。彼を訪ねてくる世界のセレブリティゲストたちに、世界のどこにもないデセールを食べさせなければいけないという義務感と、食べさせたいという一途な向上心、それが彼を磨いたのだ。なぜなら、誰かのコピーであるデセールを作って、ゲストに「なんだ、世界のあそこで食べたあれじゃないか」と思われたら、ロブションの顔に泥を塗ることだから、とも。では、オリジナリティとは何か? 
 
 「輸送や栽培技術の進歩から、今では北半球と南半球の作物、つまり冬と夏の果物が同時に手に入る時代になりました。これまでの旬を合わせ、地域を合わせるという既成概念を超えた組合せも可能になっています。その中で常に私は、新しい必然の出会いを探し求めているのです。それがオリジナリティにつながるから。あくまでそれは、基礎技的なテクニックを体得したうえでのことですが。その上にどれだけの付加価値をのせられるか、そこが勝負になってくるでしょう」とも。その言葉は「世界のベストパティシエ賞」に輝く日も決して遠くないであろうと思わせる力強いものであった。 

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ベリー類のハーモニーが印象に残る洗練されたエレガントな一皿。

小松宏子 こまつ・ひろこ●フードジャーナリスト。料理研究家の家庭に生まれ、幼いころから料理に親しむ。雑誌や料理書の編集・執筆を通して、日本の食文化を伝え残すことがライフワーク。近刊に『WASHOKU SEASONING』(小学館刊)。
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